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400年変わらない、商いの精神
~創業1584年の呉服屋が語る、着物の奥深さ~

(左からSAKEDRESS 森氏・京ごふく ゑり善 亀井 彬氏)

日本文化を信じ,新たな価値を創造する一流たちの情(こころ)を発信し、さらなる『日本文化の発展に貢献したい』との想いで立ち上がったTHE SAKEDRESS STORIES

天正12年(1584年)創業。440年近く伝統を残し受け継いで来た、ゑり善代表 亀井氏が思う文化と継承について

SAKEDRESS 創業者 森(以下 森):
先ほどはSAKEDRESSを飲んでいただきありがとうございました。
亀井さんからのご感想をお聞かせいただきたいです。

亀井氏:
しっかりとした”個性”のある日本酒ですね。多国籍料理に合わせたり、ロックアイスを入れて飲んでもらいたいとのお話を伺いました。日本以外の国でもお仕事をされる経験があった森さんだからこそ、伝えたい、広げたい価値観をお持ちで、そのコンセプトが体現されているように感じております。
私は京都出身なのですが、幼い頃からお正月など親戚が集まると、必ずといってもいいほど、大人たちは日本酒を囲んでいたのです。私もいつかその中に入りたいと思っていて。その影響か、今では日本酒が大好きです。
普段はお刺身などと一緒に、すっきりとしたお酒を飲むことが多いです。組み合わせを考えるのは少し苦手ですので、SAKE DRESSならではの、お料理との組み合わせをご提案いただけるのはとても嬉しいです。いつか友人や大切な方とわいわいと愉しんでみたいですね。

興味関心の先にある「体験」を共に

森氏:
テクノロジーの発達は時代の変革をもたらし、消費者の興味関心の領域が広くなっていると感じています。伝統文化である着物をゑり善ではどのように次世代に伝えていくのでしょうか。

亀井氏:
現代でも着物に興味関心がある方は多くいらっしゃいます。その方々が、実際に袖を通すまでのハードルを越えていけるよう、私たちがお客様1人1人に寄り添って、よりパーソナルなお手伝いをしていくことが、大切だと感じております。
たとえばコミュニケーションの手法も、以前は対面が当たり前でしたが、新型コロナウイルスの感染が広がる中では、お客様と直接お会いすることができなくなってしまいました。一方で、メールやLINE、SNSなどのツールは増えていますので、いかにお客様が「気軽に相談できるように」企業として対応できるか、ということはいつも考えております。

森氏:
パーソナルなお付き合い、日本酒にも通ずるものがあります。私も日本酒の国内市場が縮小している中で、若年層や女性との接点に課題感を持っています。着物の世界も似ている状況と類推致しますが、その課題をどう克服されていこうとお考えですか。

亀井氏:
まずは、着物の持つ奥深い魅力を発信し続けることですね。布を大切にする、親から子へ受け継いでいく、季節を味わう、など日本人が大切にしてきた価値観を、着物は教えてくれます。単なる衣服を越えた奥深い魅力を、言葉にして伝えていくことで、興味・関心を持ってくださる方が増えていくと信じております。
また、若い世代にとっての参入障壁の一つは、着物に興味はあっても身近に相談できる人がいないことです。少し上の世代の方であれば、ご家族の中に誰か一人は着物が好きな方がおられたでしょうし、生じた疑問は家庭内で解決できました。ですが、最近は核家族化も相俟って昔のようにはいきません。
そこで私たちがご家族に代わって、身近な存在として、不安や疑問を一つずつ解決していく役割を担うことで、お着物を愉しむお手伝いができると実感致しております。

森氏:
奥深い魅力の発信と身近な相談相手になること、それは興味深いです。今までの取り組みで、成果を実感した場面はありましたか。

亀井氏:
正直に申し上げますと、コロナ禍に入り、「多くのお客様にとって、着物は不要不急なもの、今の世の中に必要のないものになるのではないか」と不安になる時期もございました。ですが、自粛要請が解除されたタイミングで着物を見に来られる方も大勢いらっしゃって、着物を着てお出かけしたいというお客様のモチベーションは変わっていないことを実感しました。
最近では、着物に興味を持ってくださる男性も増えています。コロナで会社の残業や集まりごとが減り、自由な時間が増えた影響かと思います。そこで余暇をどう楽しむか、となったときに、「着物を着て出掛けてみよう」と思っていただけているようです。
他には、茶道や香道を愉しんだり、能や狂言、歌舞伎など伝統芸能を観に行く際、せっかくならば着物を着てみたい、とご相談のために、店を訪れてくださる方も多いですね。着物単体ではなくて、着物を着ていくことで得られる”よりよい体験”をお客様は求めているのだなと。

森氏:
仰る通りだと思います。日本酒にも共通することですが、どう楽しむかが大切なのだと改めて思います。私も日本酒プロダクトではなく、日本文化を包括し発信していきたいと考えています。

空間を彩る最高のコーディネート

亀井氏:
お出かけやイベントごとの日に合わせてコーディネートを変えるのも着物の醍醐味です。季節や場所、その日のお食事の献立、どういう方と一緒に過ごすか、といったことまで考えてコーディネートができると、より面白みが出てまいります。
例えば、着物を着てクラシックコンサートに行く際、その日の作曲家がドイツの方なのか、オーストリアの方なのか、フランスの方なのかによって、帯締めの色を変えたら、それはすごく粋なことですよね。イタリアンでのお食事の場であれば、コーディネートに緑を取り入れてみるのもお洒落です。

ゑり善には、お客様と一緒になって大切なその日の着こなしを想像することが大好きなメンバーが揃っております。お客様がどう楽しむかも考えながらご提案をすることが一番の幸せで、私たちがずっと大切にしてきた商売の形だと感じます。

森氏:
着物のみではなくトータルな空間や体験作りを大切にされていることが伝わります。今後は入国制限の緩和を受けて外国人のお客様も増えるかと思います。何か心境の変化はありましたか。

亀井氏:
この日本独自の文化をどう発信していくかということを、より深く考えるようになりました。また、反対に日本人が海外に行って着物を着る機会も増えるでしょう。海外の方が期待されるのは、何かアレンジを加えたものよりも日本の本質が伝わりやすいものです。ですので、着物姿を一目見ただけで日本を感じてもらえるのが理想ですね。

それに、着物を着ているだけで日本の文化を語るきっかけにもなります。着物の表地は8個のパーツだけで構成されていることをご存知ですか。まず、13~14メートル程ある生地を、8個のパーツに裁断するのですが、生地の余りはほぼ出ません。仕立ての際に中に縫い込んでおくことで、大切な人に譲る際に、サイズ直しができるようになっております。スーツや洋服であれば、裁断した後は余りの生地を捨てざるを得ないところですが。ここにも布を大切にする日本人の精神性が表れている気がします。

森氏:
大変共感できるお話です。日本酒は日本人だからこそ生まれたものだと考えています。日本酒を気温の低い冬場に仕込むことを「寒仕込み」と言いますが、10月から4月の間、雪解け水や冷たい空気を肌で感じ手足がかじかむ中で仕込んでいます。一方で30℃を超える麹部屋もあります。これは真面目な性格で胆力のある国民性だからこそ続けられることではないでしょうか。
『SAKE DRESS』も日本酒千年の歴史と技術の賜物だと自信を持っておりますし、だからこそ、品質だけでなく、そこに込められた日本人の在り方も伝えていきたいと考えています。

こだわりの物作りを支える「正商」の心

亀井氏:
ゑり善の経営理念は、正しい商いと書いて「正商」と言います。携わっている職人さんの想いを、お客様からも正しく評価していただけるよう伝えていくことが私たちの使命です。そして正しいことを続けていれば、お客様もきっと共感してくださる。
私たちは、お客様から、実際に着用なさった日のご感想をお伺いするところまでがお商売の基本であると捉えております。「売っておしまい」ではなく、そこまで含めて、素晴らしい販売が行えたかどうかが決まるのです。もし素敵なコーディネートが完成して、お客様がお友達に褒められたとなれば、ゑり善で提案してもらったことは間違っていなかったのだとリピートしてくださるでしょう。
売ってすぐ終わりになるものであれば、こだわった物作りをしなくてもいいかもしれませんが、やはり10年、20年と長くご愛用いただけることを考えるとそうはいきません。そうしたこだわりこそ日本人の心をくすぐるんですよね。

森氏:
こだわりを感じます。逆に「正商」を優先しなければ、身近で利便性の高いもので済ませればよいという時代でしょう。気に入った生地を注文してから、実際に仕立てて着られるようになるまで時間は掛かるものの、それを楽しみに待つ時間さえも一興だと感じます。

私も『SAKE DRESS』のパッケージにとてもこだわりを持っています。亀井さんからもご感想をお聞かせいただけないでしょうか。

亀井氏:
この日本らしい柄や、風合いのあるラベルの生地感にこだわりを感じます。見た目だけではなく手触りも重要ですよね。とても細かい部分まで気を配っているのだと一目で分かりました。

森氏:
品質が第一でありますが、手に取っていただけるようパッケージにも工夫を凝らしています。コロナ禍で自宅で食事を楽しむ時間が根付いている印象ですので、そのような場面でも『SAKE DRESS』を楽しんでもらいたいですね。

今後の展開としては、外国のお客様にも魅力を伝えていきたいと考えています。その意味で、デザインで日本を感じつつも「SAKE DRESS」という名前を浸透させたいですね。

亀井氏:
より大きな世界を見ていらっしゃるんですね。コロナ禍以前は、幅広い世代がお酒を片手に語り合うような場で良いアイディアが生まれることもあったので、またそのような機会も持てるようになるといいですね。

最後に

創業400年を超える老舗呉服店を次世代に紡ぐ責任は非常に重くのしかかっているのだろう。しかし重圧さえ感じない明るい口調と物腰の柔らかい人柄にお客様を虜にする術があるのだろうと感じた。正しい商いを全うすることは簡単そうで難しいように思える。しかし先代から引き継ぐ軸をブラさないことが400年続く強さであり時代を問わずして愛されるブランド力なのだろう。
100年前、私の初代も日本酒を造り「人や社会を明るくしたい」との想いで「民光」と名付けた。その想いをしっかりと汲み、そして初代を超えていく想いで「自ら輝き、周囲を灯す」日本酒ブランドSAKE DRESSになることを成し遂げていきたい。

株式会社 ゑり善
京都市下京区四条河原町御旅町49
Webサイト
https://www.erizen.co.jp/