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日本の文化伝統とデジタルアートの融合で新たな価値を創造する
~デジタルアーティスト集団・一旗が魅せる次世代アートと世界観~

(左からSAKEDRESS 森氏・株式会社一旗 代表取締役 東山武明氏)

日本文化を信じ,新たな価値を創造する一流たちの情(こころ)を発信し、さらなる『日本文化の発展に貢献したい』との想いで立ち上がったTHE SAKEDRESS STORY

徳川家康生誕の地・岡崎城天守閣をはじめとする城や寺院、サンマリノ共和国の世界遺産構成資産などのプロジェクションマッピングやインスレーションの演出を数多く手掛け、日本の文化伝統とデジタルアートを融合して新たな価値を創造し続けるデジタルアーティスト集団・一旗代表の東山武明(ひがしやま たけあき)氏のこだわりとは。

SAKEDRESS 創業者 森(以下 森):
先ほどはSAKEDRESSを飲んでいただきありがとうございました。
東山さんからのご感想をお聞かせいただきたいです。

東山氏:
私は無類のお酒好きなのですが、SAKEDRESSは数ある日本酒の中でも香りが高くフルーティーでとても飲みやすく、和食からフレンチ、エスニックまでどんなジャンルの料理にも合わせやすい日本酒だと思いました。そして味わいが重層的で、果物畑などいろいろな風景が思い浮かびますね。風味の要素が何層にも重なり、飲んだ後にもふわっと香りの余韻が残ります。
食事と合わせても良いですが、食後にこれだけで飲んでもゆったりとした時間を楽しめるお酒ですね。
感性豊かで贅沢な大人の日本酒、と表現したら良いでしょうか。バーで飲むのも良いと思います。
パッケージも含め、森さんの日本酒ブランド作りへのこだわりや気概が感じられます。

日本の文化伝統をいかしてデジタルアートで新たな風を吹き込むこだわりとは

森氏:
日本ならではの伝統文化をいかして、そこにデジタルアートで新たな風を吹き込む。そうした作品を制作する上で東山さんはどういった役割をされているのでしょうか。

東山氏:
私の役割は総合演出・プロデューサーです。
私たちは日本の三大都市圏・名古屋を拠点に活動しているのですが、愛知県は1900年の歴史を紡ぐ熱田神宮があり織田信長・豊臣秀吉・徳川家康のいわゆる三英傑を輩出した土地でもあります。そうしたその土地ならではの歴史や文化伝統をいかしながら、そこにデジタルアートという新たな風を吹き込むことで、新しい価値を創造しようとさまざまな挑戦をしています。
ひとつの作品を制作するのに、グラフィックデザイナーやCGクリエーターなど、大勢のクリエーターが関わっています。私はオーケストラの指揮者のように、大勢のクリエーターの個性を発揮しつつも、全体として制作を指揮して一つの完成度の高い作品として仕上げる役割です。
森さんのお話もうかがって、森さんの役割と私の役割は似ている気がしました。

森:
確かにそうですね。先ほど見せていただいた作品(岡崎城天守閣 プロジェクションマッピング)でも、大勢のクリエーターの作品を組み合わせて一つの作品として仕上げているところが印象的でした。細部までのこだわりを感じましたが、特にどのような点を大切にされているのですか。

東山氏:
私たちが作品を制作する上で大切にしているのは、その土地ならではのストーリーを織り交ぜるということです。例えば「岡崎城天守閣 プロジェクションマッピング」の制作過程で言えば、まず岡崎市の自治体の方々と打ち合わせをしながらいつどこで何を、という概要を決めていきます。その際に欠かせないのが、岡崎市ならではのストーリーのヒアリングです。岡崎市は徳川家康生誕の地として全国的に有名ですが、徳川家康が誕生した時、岡崎城の上を雲が覆い金色の龍が現れたという伝説があり、岡崎城は「龍ケ城」とも呼ばれていたそうです。そうしたヒントをもとに金色の龍のCGを制作し、縦横無尽に空を飛ぶ龍を作品に盛り込みしました。
ほかに、岡崎市の伝統産業「三河花火」があります。花火の原料は火薬ですが、徳川家康の天下統一に貢献した三河武士の鉄砲隊、それから天下統一後は徳川家康の出身地だからこそ火薬の製造が許され、その技術が現代まで受け継がれて三河花火という伝統になっています。岡崎の人々にとって花火には特別な思い入れがあり、岡崎を代表する花火大会が中止になる中で、岡崎城天守閣のプロジェクションマッピングのフィナーレには盛大な花火大会をCGで描いた場面を入れています。
こうしたその土地ならではのストーリーを入れることで、地域の人々にその地域だからこそできる作品として誇りを持っていただきたい、ふだん意識しないその地域ならではの素晴らしい文化伝統に自信を持っていただきたい、そうした思いがあります。

森:
地域だからこそできる作品の部分は、まさに日本酒作りと共通する部分がたくさんありますね。同じ原料でも水や風土・技術によって全く異なる表情を見せてくれるのが日本酒です。SAKEDRESSは1000年受継がれる日本酒の技術が全て結集し、世界中のお客様の感情や心情、情(こころ)を灯していきたい。ある種日本を代表する日本酒ブランドの気概を持って国内外で活動していく覚悟です。

日本酒との共通する世界観
~歴史・文化・伝統があってこその表現の可能性~

東山氏:
お話しするほど、お互いに通じるものがあると気付きますね。
プロジェクションマッピングでは映像を制作する前にまず土台となる音楽を私が選曲するのですが、音楽もその土地の歴史や文化伝統に沿ったもの、それらを昇華させたものになるよう、膨大な音楽を聞き構成を組み立てていきます。雅楽や仏教音楽など日本の伝統的な音楽の要素を入れたくて音楽を一から作曲家に制作してもらうこともあります。
作品作りでは音楽も含めた全体の起承転結、ハーモニーを意識し、せっかく時間をかけて制作した場面を大幅にカットするという判断をすることもあります。最終的に完成した作品は一本筋が通っている、そうした過程や捉え方も日本酒作りとどこか似てはいないでしょうか。

森:
とても共通することがあります。
日本酒造りは、造る前に大枠の味わいや香り・飲むシーンを想像します。そして完成に向けて温度や衛生管理を徹底し想像を形にしていきますが、辿り着く先が想像と異なる場合もある。天候や気温、水温などの微妙な変化が品質に影響をもたらすのです。視認することのできない微生物の働きを泡や香りから感じとる造り手たちは「アートに携わっている」と感じています。
ただ一生懸命描いてきたアートを否定することもあります。それはお客様の期待を裏切ることは出来ないという大変心苦しいケースでありますが、一方で思いもよらない想像を超える作品に辿り着くことさえある。
扉を開くまで分からない世界、日本酒造りというのは東山さんの心掛ける「昇華」を自然に表しているのかもしれません。

歴史や文化伝統を革新的なアートとして昇華させる

森:
東山さんの世界はまさにアートだと思いますが、伝統文化に革新を加えていく中でどういったことを意識されていますか?

東山氏:
私たちが手がけているプロジェクションマッピングやインスタレーションといったいわゆるデジタルアートと呼ばれる分野は、現代アートの世界でもあります。
デジタルアートと聞くと脈絡のないサイケデリックなイメージ、現代アートと聞くと突拍子もない理解不能なイメージがあるかもしれませんが、私たちが大切にしているのは、あくまでその土地の歴史や文化伝統を最大限いかすことを前提に、その土地ならでは、その空間だからこそという意味の追求です。それはその地域の歴史や文化伝統と深く向き合うことです。
そしてその意味に立脚し、言語の壁を超えて世界の誰が見ても感じ取りやすい、感性にしっかりと刺さる表現に落とし込むことです。
岡崎市では、岡崎城天守閣以外にも徳川将軍家の菩提寺・成道山大樹寺という寺院でもプロジェクションマッピングとインスタレーションを行いました。大樹寺は重要文化財の襖絵を所蔵しているのですが、襖絵はふだんは宝物庫で保管されていて非公開になっています。もともと襖絵があった場所には、代わりに真っ白な襖が入っています。そこでこの襖絵の高解像度スキャンデータをもとに、襖絵にしっとりとしたアニメーションをつけた映像作品を白い襖に投影することで、あたかも襖絵が元の場所で時を超えて生き生きと動き出したかのような、その場所ならではの意味を持つ空間に変化します。
襖絵には重要文化財としての歴史的・美術的価値はもちろん、それぞれにストーリーや描かれた背景があり、そうした学術的な意味もアニメーションに落とし込んでいます。
歴史や文化伝統を壊すのでも無視するのでもなく、歴史や文化伝統に立脚するからこそ革新的なアートとして昇華できるのだと思います。

森:
本当に日本の歴史や文化伝統は宝の山だと思います。そもそも東山さんが日本の歴史や伝統文化を大切にしようと考えたきっかけはあるのですか。

東山氏:
実は私は東京生まれの東京育ちなのですが、私の前職はNHK職員で全国転勤があり、ある時期に札幌に転勤になったんです。東京で育った人間が北海道に転勤だと言われると、それはなかなかのショックでした。
ただ住めば都で、北海道に住んでみなければわからない素晴らしさ、北海道ならではの歴史や文化伝統がある。それは東京とは全く違うものです。一方で、東京の人の視点と北海道の人の視点もまるで違います。東京から来たからこそ感じ取れることもたくさんありました。
東京と札幌、あるいはその後東京に戻ってしばらく後に転勤した名古屋、それぞれの土地でたくさんの人に出会って学び、日本の中でも地域によって歴史や文化伝統は全く違う、だからこそ面白い、だからこそ価値がある、地域の個性をもっと発揮できる可能性があると考えるようになりました。

森:
まさに私が日本酒をもう1回始めようと思ったのも日本酒の個性や可能性を広げたいと思ったからです。私の前職は航空会社ANAでパイロットが世界中で宿泊するホテルを選定する業務に携わっておりましたが、海外出張も頻繁で10日間で世界一周することもありました。その際異国の地で埃を被っている日本酒に遭遇しました。現地の有名百貨店に日本酒が置いてあるものの、埃を被る姿に日本人として、また日本酒のアイデンティティのある家で生まれたこともあり、非常に苦痛でありました。
こうした現状を知る一人の日本人として、日本酒の輸出が伸長する現状を手放しに喜んではられないと感じておりました。確かに日本酒全体の輸出は伸長しておりますが、同じ醸造酒のワインのように幅広いストーリーや深い歴史を持つ作品であるとの認識は進んでおりません。
日本酒の品質はもとより、その日本酒の意義と言いましょうか。背景や想いを通じて個性をしっかりと世界のお客様へお伝えすることで、世界の人々の感情や心情の琴線に触れる作品となる。埃を被るのではなく世界の中心で輝く日本酒を創ることが出来る。そう信じて『SAKE DRESS』と命名しました。
また日本の四季や古代より愛される麻の葉模様や紅白で表された美しい意匠は、日本酒の歴史や伝統文化の興味関心を抱くきっかけになると考えています。ワインやシャンパンに類似するのではなく、伝統文化を大切にし圧倒的な独自性を築くことが世界で求められているのではないでしょうか。

世界の舞台への挑戦

東山氏:
なるほど。『SAKE DRESS』のパッケージは海外市場を意識していると思いましたが、そうした背景があったんですね。私たちも最初から世界の舞台を意識していました。そもそも日本は映像技術のレベルが高く、私たちのプロジェクションマッピングやインスタレーションも世界で通用すると考えています。一方で、日本は海に囲まれているので機材輸送の問題がありなかなか簡単にできるとは限らないのですが。
世界的に見て、日本はコンテンツ産業、メディア芸術の分野が発展していると思います。漫画やアニメ・ゲームが特にそうですが、プロジェクションマッピングやインスタレーションもそうしたコンテンツ産業、メディア芸術の一つとして世界で戦えるはずです。
そして世界で戦う上で、私たちは日本の文化伝統を昇華させた作品だからこそ外国人にも刺さると考えています。
実際、私たちの作品も記録映像として残しているのですが、外国人の再生回数が急激に伸びています。それはやはり、日本の歴史や文化伝統をいかした作品作りをしているからです。

森:
ヨーロッパでは絵画や美術などのアートが身近で、アートを鑑賞しながらワインを飲むというスタイルもよく見られますよね。一方で日本では、例えば書道を鑑賞しながらお酒を飲むような場はほとんどないと思います。今回のお話をうかがって、ぜひ東山さんたちの作品と『SAKE DRESS』のコラボレーション企画をやってみたいと思いました。

東山氏:
五感で味わうアート空間、面白いですね。日本の文化伝統を昇華させた作品同士を組み合わせることで、新しい扉が開く気がします。今後もお互いに高め合っていければ良いですね。

最後に

今回の対談を通じて美しいプロジェクションマッピングを完成させる為の徹底したこだわりを伺えた。それは地域で受継がれる文化伝統、そしてそこに生きる人々の誇りを、作品を通じて「昇華」させるため。

眠っていた宝や日常の風景に現代アートという新しい価値観を融合させる。
1000年つづく日本酒の歴史は、風土や水に寄添い日々技術を高めている。この技術を尊敬し圧倒的な香りを纏うプロダクトの軸としつつ、日本美デザインという新しい価値を融合させた「SAKEDRESS」。

世界を知る東山氏の「感性豊かで贅沢な大人の日本酒」との評価は、SAKEDRESSが目指す「日本文化の結集で世界の情(こころ)を灯す」という未来に歩み進めていると、自信を深めることのできた対談であった。
株式会社一旗
〒451-0042 愛知県名古屋市西区那古野2-14-1 なごのキャンパス3F 3-10
Webサイト
https://www.hitohata.jp/